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51 学習塾はブラックバイト!?

51 学習塾はブラックバイト!?

2017年春、学習塾の事務アシスタント募集の広告を目にする機会がありました。そこの募集文言は以下の通りです。
『学習塾で採点や事務処理のお手伝い、時給800円』
この募集広告で決定的にまずい箇所がありますがお気付きでしょうか。

千葉県の最低賃金は2017年5月現在、842円です。それを下回る雇用契約は例えアルバイトであっても締結することはできません。しかしこのような求人がまかり通っているのが現実なのです。

また、別の事例ですが、個別指導塾で働く学生講師は授業時間(ここには給与が発生します)の前後に『授業準備の時間』『授業報告書式の作成』(これらには給与は発生しません)を義務付けている塾がほとんどです。

授業準備や報告書式の作成にはそれ相応の時間がかかります。場合によっては授業時間以上の時間がかかりますが、それらは『奉仕』という形での労働が強いられるのです。結果として労働対価を拘束時間で除したら最低賃金を下回っていた、という事例は枚挙にいとまがありません。

現に「ブラックバイトユニオン」という労働組合に寄せられる相談のうち、3割を超えるものが塾講師関係という統計も出ています。業種別では塾講師が販売・飲食等を圧倒してダントツに多いそうです。学生講師は自分の試験前はもちろん、就職試験でも休めないことがあって一時期は社会問題化しました。

また、中学校の定期試験前に教室開放をする塾も少なくありませんが、その際の教室運営を講師に任せる(押し付ける?)場合、殆ど無給でやらせているのが実情だそうです。塾側の言い分として『無料教室開放は自習会なので授業料収受がない。だから講師に支払う人件費相当額があった場合、赤字になってしまう』『そもそも生徒への思い入れがあれば無給でも来るのが当たり前だ』とのことです。

ある近隣の学習塾では『うちはブラック企業ですから』と胸を張っていた経営者もいました。教室開放の日、その経営者は教室に出勤せず、無料奉仕の学生講師だけで教室を回しているそうです。私の目には些か無責任に映りました。私は日曜開放も朝勉強も私が教室運営をするべきだと思い、実践しています。

さらに社員に目を移すと、教室管理を行う社員(一般的に教室長・教場長と言った役職)は管理監督者なので時間外割増賃金(いわゆる『残業代』)を付けない、とする会社がなんと多いことか… これは昨今の学習塾過多の時代において、必要以上に費用(人件費)を掛けられない背景があります。

しかし司法判断で『教室長は管理監督者ではない』という判例が既に出ています。それにもかかわらず『名ばかり管理職』としているケースが非常に目立ちます。つまり学習塾経営者は社員から搾取することによって利益を生み出すという前時代的な産業構造を当たり前と思っているのではないでしょうか。また、社員で働いている側も「不勉強が不利益に繋がる」ことを体現しているように感じます。

果たしてこのような扱いの元で勤務している教室スタッフが生徒を大切にしようと思ってくれるのでしょうか。

 

LS WILLではこの教室で働いてくれるスタッフに対して以下のスタンスで接しています。

『教室スタッフは生徒さんを大事に思って欲しい。だから教室管理者は教室スタッフを可能な限り大切にする』

これ、当たり前のことですがなかなか難しいようです。しかしこの骨格がなければ大切なお子様をお預かりすることはできないと思います。

LS WILLでは授業準備は教室管理者が行います。従って講師(教室スタッフ)は授業開始前までに出勤すればいいのです。また、報告事項も記録内容をそのまま提出するので授業終了が報告書類の完成となります。また、報告事項について特に重大・重要・緊急と思われるものは授業中に口頭で報告することとなっているので意思疎通の遅滞に結びつくこともありません。従って『奉仕』は発生せず、コミュニケーションも円滑にできるシステムを組んでいます。

さらに重要なこととして、学生講師には『働くことの意義』を身に付けてほしいと思っています。彼らが意義を理解して溌溂と働けることはそのまま生徒さんにいい影響を与えることができるからです。

ちょっと考えて頂きたいのですが、『うちはブラックバイトだから…』と背を丸めて働く講師と、『誇りを持って教えよう』と背筋の伸びた講師、どちらに教わりたいですか? 私は背の伸びた講師に授業を持ってほしいと思います。

先日、授業の合間に生徒さんと講師が内緒話をしていました。

生徒さん 「この塾の先生にはどうしたらなれるの?」
講師   「う~ん… とりあえず塾長の好きな『一生懸命』ができて、それから勉強かな…?」
生徒さん 「そうか…(かなり長い間考えて)… じゃあ今日は宿題多めに出して下さい!」
通っている生徒さん、そして働いてくれる講師にとっても誇れる教室にしたいと思っています。

今回は学習塾における労務管理が主題となってしまい、『学習塾コラム』にそぐわない内容でしたが、塾を選ぶ際にこのような点に目を配ることも大切なのではないかと思います。ぜひご参考までに。