2020年度から大学入試が大幅に変更されるのは周知の通りです。英語の4技能重視型・外部評価導入形式、国語以外の科目でも記述重視型出題など、センターとは全く異なった試験になることに異論はありません。しかしそれで目的が達成されるのでしょうか。
現在、日本の産業は国際的に見て大きな出遅れが顕著です。その大きな要因の一つに人材不足が上げられています。また、OECD(経済協力開発機構)によるPISA(国際的な学習到達度に関する調査)の結果から見ても日本の教育が現代社会のニーズに合致していない(と思われる)点が目立ちます。
しかしそれは『入試を改革すれば済む』問題なのでしょうか。私はこの点が間違っていると思っています。これは『刑罰を重くすれば犯罪は減る』のと同じ論法です。問題の本質は『治安を維持するために○○な方法を用い、○○に○○名の警備要員を置く』などの対策が優先されるのではないでしょうか。それには最終的な措置となる刑罰はあまり意味を持たないと思います。
私は学問にもっと自由があって良いと思います。特に高校大学と学習履歴が重ねられることにより『更に深くまで学習すべき項目(これはいわゆる専攻科目ではありません)』と『一般的に知っておくべきこと(同様に一般教養科目とは別物です)』はもっと大胆に分けるべきなのではないでしょうか。現在の指導要領ではスケジュールがきつすぎて『更に深くまで学習すべき項目』の掘り下げが足りないように感じます。指導要領・シラバスにも『隙間』という意味の遊びがあって良いように思います。
そしてそれらを改善してもなお時間が取れないなら大学の単位互換制度を充実させて一時的に他大学で学べるシステム、国内留学といったシステムを一般化させることも視野に入れるべきなのではないでしょうか。ましてや海外留学がこれだけ一般的になっているにもかかわらず、その留学目的は8割以上が語学だけ、というのも寂しい気がします。『日本は英語後進国』との指摘を真に受けて英語だけ勉強していれば国際派という勘違いはそろそろ改善されて欲しいと思います。
私個人的に大学(学部)は4年で卒業するべきと思います。しかし思うところあって学問を修め、それで時間が足りなければ大学に残るべきだと思います。それは世間様の言う『留年』とは本質的な意味が違うように思います。
私は大学時代の恩師に『テキストが全て正しいことを論述している訳ではない』ことを教わりました。つまりその恩師は『大学生が自分の学びたいことを学ぶなら教材を書けるくらいになれ』と教示されたわけです。それには潤沢な時間が必要でしたが、幸いにして私は大学3年までに卒業に必要な単位の履修を終え、4年次には専攻の勉強に没頭できたので先生の教えは30%ほど(卒業時に先生が下さった評価でした)踏襲できました。大学4年次に学んだことは社会に出てから何より役に立ちましたし、自信にもなりました。これは恩師が与えて下さったものと感謝しています。『25 読書は必要?(1)』でも触れましたが、猛烈に読書をしたことも財産になっています。
入試を刑罰と置き換えるなど乱暴な論議になってしまいましたが、現在論議されている大学入試制度改革は少し論点がずれているように思います。2020年度の改革はどのような結末を迎えるのか、そしてそれを再度改革しようという動きはいつ頃起こるのか興味深いところです。
そして現在小中学生の皆さん、ご家庭の方々に申し上げられることは『いくら改革があっても本物の学力・力がついていればいくらでも対応できる』ことです。それには問題集や参考書に頼らない学習も必要です。今回の大学入試制度改革でも謳われる本当の読解力は本を読むことです。また、英語の読解力は教材からでは難しいと思っています。それではどういう対策が考えられるのでしょうか。
英語の読解力を付けたいなら『The New York Times』の電子版が良いのではないでしょうか。残念ながら2016年春から有料化されましたが、一ヶ月15㌦から閲覧(月間●●本の記事閲覧まで無料、等のサービスもあります)できます。全ての記事を読む必要はありません。最初は気になるものや短いコラムからで良いのではないでしょうか。最近では『ドナルド=トランプのツイッターをフォロー』という方法も耳にするようになりました。確かに英語習得と世界情勢の把握が一度にできます。トランプ氏のツイッター文面は易しい文法が多いので中学生や初心者にはお勧めです。
また、リスニングならAFN(American Forces Network アメリカ軍属とその家族のためのラジオ放送網。以前はFEN:Far East Network極東軍事放送:と称していました)という方法もあります。これはラジオ放送なので費用も最低限に抑えられます。ただし、ネイティヴのための放送なので最初は何を言っているのか全く解らないと思います。しかし2週間から1ヶ月、1日30分でもBGM代わりに我慢して聞き続ければ徐々に徐々に理解できる箇所が増えてきます。こうなれば後は楽になります。
また、スポーツに興味があるならアメリカのメジャーリーグや欧州サッカーの現地放送を見るのもありだと思います。興味ある画像に言葉が乗っているわけですから関心を持って見ることが出来るのではないでしょうか。ただ、この放送はアミューズメント、エンターテインメントとして放送しているので英文の乱れは少し気になります。また、少し早口な点も踏まえて利用して下さい。初めは理解しようという気持ちを抑えて取り組むことが大事なのではないでしょうか。
制度が変わって大変な思いをするのはいつも小中学生、そして高校生大学生です。彼らのためにもよりよいシステムが出来て欲しいと切に願っています。
今回は少し長くなってしまいました。最後までお付き合い頂き感謝しております。