前の章で《ご家庭と学校・先生》の関係性について述べました。この章ではご家庭において学校や先生をどのような位置づけにすべきなのか述べたいと思います。
以前お預かりした中学生でいわゆる『地頭は良いけど点数が取れない』生徒さんがいました。こちらの説明についてはスポンジが水を吸収するがごとくといった趣で理解してくれるのですが…
この生徒さん、当初は私もどこで躓いているのかが解りませんでした。保護者面談でも家庭学習の管理や受験情報の収集についてのお話を伺い、非常に意識の高いご家庭のように感じていました。しかしそこが落とし穴でした。
塾に入って2ヶ月ほど過ぎ、雑談も普通にしてくれるようになったときの話です。
生徒さん 『学校の先生ってさ、受験のことも知らないし授業もろくに進んでいなくてダメだよね!』
私 『えっ…?』
生徒さん 『今日もお母さんが学校の先生はダメって言っていたよ。受験で信頼できるのは塾だって…』
この会話、学習塾業界にとっては非常に嬉しくありがたい話なのですが、お子様のプラスは何一つありません。ご家庭で学校や先生を否定するような言動は何一つお子様のためになりません。もし不満があったとしてもお子様の前では絶対に口にしてはならないと思います。この際、学校の先生が本当にダメかどうかは別問題です。
お子様にとって保護者様は絶対と言って良い存在です。そんな背景で保護者様が学校や先生を否定する言動を取ることはお子様にとって『学校の先生が言うことは聞かなくてもいい』という考えを生んでしまいます。その結果、学習においても『先生の言うとおりにやらなくてもいい』という考えから自己流の演習、つまり点数化しにくい方法が習慣化してしまうのです。それでは学習に対する意欲が湧くはずがありません。
この生徒さんの件ではすぐに保護者様と面談を設定し、ご家庭での方針を策定して頂くようお願いしました。元々お子様の進路について非常に高い関心をお持ちだっただけあってすぐさま状況を理解して下さいました。その上できちんとした対処を行った結果、点数も学校の先生からの評価も本来あるべき位置にまで上げることが出来ました。
前章・本章と2話にわたって学校の先生との関係作りについて言及してきました。くれぐれも誤解なきように敢えて記しますが、学校の先生のゴマをすれという話ではありません。お子様を伸ばすためのパートナーとしてご家庭・学校がフラットな関係を構築することが大切だと思います。