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754 親子関係

754 親子関係

学習塾では定期的に保護者面談を行ないます。定期面談の時期以外にも必要に応じて面談を実施します。その中で大きな話題となるものの一つに親子関係があります。

今は本当に複雑な時代です。親御さんが小中学生を過ごした時には考えられなかったような状況が今の小中学生には普通、これは厳しいことです。

また、中学生にもなると親子のコミュニケーションも難しくなります。お母様と息子さん、お父様と娘さんは特に厳しくなるようです。

それに受験という大きな外圧が加わることによって問題は余計にこじれがちです。親御さんとしては机に向かってほしい・お子さんとしては少しでも遊びたい、これは二律背反した命題です。

 

しかし・・・

これ、永遠に続くことはないと思っています。ここでエピソードを2つ紹介します。

 

一つ目、これは私が当教室に赴任して1年目の中学三年生を送り出した春に伺った話です。ちょっとやんちゃな新高校1年生が高校入学を迎えた時にお母様からお聞きしました。

この先輩、勉強は出来れば避けて通りたいタイプでした。しかし成績はちょっと厳しい、そんな時期が長く続きました。しかし、直前まで何とか粘って心からいきたいと思っていた高校への進学を勝ち取りました。

その先輩、家ではあまり口を開くことはなかったそうです。しかし塾では比較的軽口を聞いてくれるタイプでした。その中で普段は言えないご家族、特にご両親への感謝を耳にすることがありました。

卒塾直前の時期でもあったので私はその生徒さんにその言葉をきちんとご両親に伝えるよう諭しました。

その先輩、少し恥ずかしそうな顔をしながら『わかったよ。。。』と言ってくれました。続けて『センセーにそんな真面目な顔をされて言われちゃねぇ』といつものように茶化してくれることも忘れずにいました。

それから暫くして中学校の卒業式を終えた頃にご自宅にお電話を入れた際にお母様から『息子からありがとうって言われて・・・ 嬉しくて感激しました。』とのお話をお伺いしました。

その後はご両親へのコミュニケーションは適切に取ってくれるようになったそうです。お母様からは『受験であの子なりに頑張ったことが大人にしてくれたんですかね!?』とのことです。

 

二つ目、これはお父さんと娘さんのケースです。これを知った契機はお母様から相談されて私もそれとなく気にしていました。しかし生徒さんとの雑談の中で『あぁ、やっぱり・・・』と感じるような時がありました。

その生徒さん、非常に快活で誰隔てなく優しく声をかけられる生徒さんでした。学校での評価も上々でした。先輩・後輩からの人望も厚かっただけにお父様との関係だけが気がかりでした。

しかしそれは見事に杞憂でした。入試対策の作文で『尊敬する人について600字でまとめよ』という課題で迷わずにお父様のことを書きました。私は添削した時点で胸をなで下ろしたことを鮮明に覚えています。

でも、これはご両親に見せなくては解決になりません。私は何だかんだと言い訳をしてその原稿用紙をコピーしました。すぐにご家庭にご連絡したかったのですが、受験前でもあり暫くはこっそりと隠し持っていました。

やがて入試となり、無事に第一志望を突破した生徒さん、卒塾の挨拶にお母様と共に来校してくれました。その時、お母様にこっそりとそのコピーをお預けし・・・

夕刻、お父様からお電話を頂きました。志望校合格と塾で過ごした期間のお礼と共にお嬢さんがどのように考えていたのかが解って胸をなで下ろしたと仰っていました。

 

受験はお子さんを一層成長させる外的刺激に満ちています。そしてそれを見守るご家庭の皆様においてもお子さんとの関係性を見つめ直す良い機会となるのではないでしょうか。

受験という大きな外敵は時としてご家庭に大きな影響を及ぼします。しかしそれを乗り越えられた時に事態は大きく好転するのではないかと思うような出来事でした。