もう30年ほど前になりますが、東京の私立大学で初めて『一芸入試』が行なわれました。そこから全国の大学に、そして公立私立高校入試へ、さらに私立中学校入試へと波及しました。
今でもその入試制度を実施している学校は存在しています。受験生からすると『あちこちやらずに一点集中で出来るから楽なのでは・・・』という錯覚を起こす生徒さんも少なくありません。
進路指導をする学習塾の立場からすると、この方法は簡便です。楽、と言っても良いかもしれません。得意科目だけで入試に臨むので点数も読みやすいのです。
苦手科目は得点が読みにくい、これは事実です。苦手科目は多くの場合、まんべんなく苦手ではなく特に苦手な単元や出題形式があることが多く、そこが出題されるかどうかで結果が大きく異なります。
得意科目に傾斜して進められる、これは一芸入試や科目数の少ない入試で挙げられるメリットです。しかし、この場合は大きな落とし穴があることをあらかじめ知っておかねばなりません。
それは入学後の学習です。解りやすい例えを挙げると『大学に一芸入試で合格した。入学後の授業では分数の計算やレポートの基礎である小論文が解らないため単位を取れずに・・・』というケース、実は非常に多いのです。
中学受験でも『2科・4科選択受験』で2科目だけ勉強した生徒さんと4科目まんべんなく勉強した生徒さん、入学後の成績・順位に大きな差が出るのは火を見るより明らかです。
また、これは高校受験でも言えることです。私立単願で3科目だけ勉強した生徒さんと公立5科目で学習して私立にまわる生徒さんが机を並べて・・・となったら5科目の受験勉強に取り組んだ生徒さんの方が断然有利なのではないでしょうか。
進路指導・受験指導をする中で『この科目は受験に必要ないから・・・』と考える生徒さんの方が多数派です。しかし、入学するところまでではなくもっと先に目を向けて勉強に取り組ませることが出来たらと日々考えています。