学習が進み、新しいテキストを検討している小中学生やご家庭の方々にとってどんな教材が最適なものなのかなかなか判断をしにくいというお声を耳にすることがあります。
簡単すぎては効果がなく、難しすぎれば進められない。そもそも簡単すぎる・難しすぎるの『すぎる』とはどんな状態なのか見分けられない。テキスト選択は勉強の進め方を大きく左右する重要な要素です。
難易度と同様に問題の量も重要です。少なすぎると習熟しない、多すぎるとやりこなせない。適量とはどの程度を基準としたら良いのか解らないというお声も伺います。
この話で思い出す一文があります。もう遙か昔に読んだ本なので出典は定かではありませんが、新田次郎の山岳小説でした。小柄なベテランのクライマーが体の大きな初心者に岩登りを教える際にどのような岩壁を選ぶかという話がありました。
ベテランクライマーが選んだのは比較的難易度の高い岩壁でした。初心者が一人では対応できないような壁です。初心者がもっと簡単な壁ではダメなのか・・・と尋ねたとき、ベテランクライマーの返事が当を得ていました。
簡単な壁は簡単であるが故にハーケンが少ない。そうなると大柄なキミが滑落したとき、小柄なボクでは確保できない。
ハーケンとは岩壁登攀の際に滑落防止用の登山ロープを固定する岩釘のことです。難易度の高い岩壁にはそれなりに多くの残留ハーケンがあります。
教材選択において『解るけど最後まで解ききれない問題』が適度にちりばめられていることが一つの目安になります。これが『比較的難易度の高い壁』になるのです。その上でそれを補完するシステム(塾で使うなら理解させるシステム、家庭学習であれば解答解説など)があれば万全です。
それは一度目で解けなかった問題が二度目・三度目で克服できれば達成感を得られることに繋がります。小さな喜びの積み重ねが学習意欲に繋がっていくのではないでしょうか。
また、テキストを繰り返し活用することを考えれば問題量は少し多めが使いやすいようです。1回目には簡単な問題を中心に5~7割程度、2回目は中間層の問題5割程度、最後の仕上げでは難しめの問題を3割程度・・・とすると繰り返し学習・復習にもなり、より定着が促進されます。
とは言いつつも教材選びは非常に難しいものです。良いと思っているものでも改定されて内容が変わることがあります。また、小欄を述べている間も教材会社から売り込みの電話が2本鳴りました。それだけ新陳代謝が激しいのです。
正しく選ぶこと、正しく使うことは結果に大きな影響を及ぼします。