毎学期の終わり、大多数の生徒さんにとっては非常にイヤな、そしてご家庭にとって関心深い資料が学校から出されます。その名は通知表、私自身も良い気分で受け取った記憶は殆どありません。しかし、乗り越えなければならない壁であることには違いありません。
さて、通知表の基礎知識から復習しましょう。中学生の通知表でお父様お母様世代には通知表の『5』が非常に価値の高いものでした。しかし最近ではそうでもなさそうです。なぜでしょうか?
お父様お母様世代では通知表の主流が『相対評価』だったことが大きな原因です。相対評価とは『各段階の評価(5~1)の割合を予め定め、評価順位ごとに成績を当て込む方法』です。『5の評価』は全体の7%(割合が違う地域・学校もあります)なので高く評価できるものと言えます。
対して現在の中学生は『絶対評価』となっています。絶対評価とは『各段階に予め点数を設定し、それを超えた者に対して評価を与える方法』です。『定期テストの点数+授業態度+意欲関心+提出物などが80%以上なら5を与える』などという形です。ここで問題なのは合計点の点数設定と点数評価しにくいブラックボックスがどのように機能しているかと言われています。
難しい理論ばかりでなく、分かりやすく数値を挙げて解説しましょう。『相対評価の分布と絶対評価の分布』について数値を並べます。なお、絶対評価の数値は2017年度千葉市立こてはし台中学校の数学です。
評価 相対評価 絶対評価
5 … 7% 25.7%
4 … 24% 29.9%
3 … 38% 24.3%
2 … 24% 19.4%
1 … 7% 0.7%
ざっと見て『成績のインフレ』を感じます。『4を取ったから平均より良い』と思っていても5と4を足したら過半数、つまり4を取っていても平均以下の可能性もあるのです。まぁ、学校の先生にとっても可愛い生徒さんでしょうから、親心で『何とか高い評価を付けてあげよう』としている、そのように見ることも出来るのですが…
私も仕事柄これまで何千枚という通知表を拝見しています。3年間オール5というものもあれば、学校に行くことが叶わず『評価不能』になってしまったものなど様々です。ただ、それが生徒さんの持っている力の全てだとは思っていません。あくまで『学校評価という側面の一つ』でしかないことは経験則からも理解しています。
反対に、『相対評価を用いたことによる悪弊』の例を次章で挙げましょう。併せてお読み下さい。