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323 平成という時代 ~学習塾編~

323 平成という時代 ~学習塾編~

旅行会社から学習塾に転身したことは周りに驚かれました。何より自分自身が一番驚きました。勉強が好きだったわけでも得意だったわけでもありません。良く『学校の先生や塾の先生は皆勉強が嫌いという人ばかりだから信用できないよ。』と生徒さんから言われますが、私の場合は掛け値無しに勉強とは無縁でした。

しかし、旅行業と共通したものは感じました。それはイメージを扱う』ことです。旅行は今現在目の前にあるものではありません。従って資料やツールを使って『旅行に行ったイメージを持って貰う』ことが大切になります。学習塾も同様に『2年後3年後の自分をイメージして貰う』ことからスタートします。ここでは下調べやコミュニケーション能力が大切になる、これも共通したことだと思います。

そうは言っても右も左も分からない全くの異業種で戸惑いの連続でした。まず最初に戸惑ったのは『中受』『併推』『新中問』などの業界用語でした。今でこそ私自身が日常的に使っている言葉ですが、当時の私には異国語のようにしか聞こえませんでした。同期入社の仲間(学習塾経験者ばかりでした)に分からぬよう、自分用の用語メモを作ったことは鮮明に覚えています。

私が不安な日々を送っている中、先輩からある助言を得ました。この言葉は私が今でも大切にしている言葉です。

『今この時、教室でキミが生徒さんに出来ることは殆どないよ。』『勉強のアドバイスなんてマニュアル通りのことを喋っても生徒さんは見透かすよ。』『それなら出来ることを探してやってごらん。』『今キミが出来ることは環境を整えて生徒さんを迎えること、そしてそれを続けることだよ。』

平たく言えば『毎日ピカピカの教室で生徒さんを迎えるように。』と指示したのだと思います。しかし私はそれを愚直に実行するしか術はありませんでした。

しかし不思議なもので掃除機掛けや机拭きをやっていくうち、徐々に無心になって『今日は○○くんが来るな。この間解けなかった問題は解けるようになったかな。』『今日来る○○ちゃんは先週部活の試合だったな。結果はどうだったかな。』等々、考えることがいつしか習慣となり、教室運営に良い影響を及ぼしました。

今でも教室掃除は入念に取り組んでいます。隣の大家さんには『そこまで毎日やらなくても…』と言われ、生徒さんからは『センセーの趣味は掃除なの?』と聞かれる始末ですが、私にとって教室運営において欠かせないものと思っています。

平成という時代を総括するはずだったのですが、学習塾の教室運営でどんなことに留意しているのかを長々と述べてしまいました。しかしこれは私はこの時代に受けた大切な教えだったと思っています。