受験勉強の例えによく使われるものとして山登りがあります。私は山登り自体にはあまり興味が無いのですが、山岳小説は好きでよく読むことがあります。言ってしまえば耳学問の領域を脱しないのですが、興味深い表現に当たるとぞくっとします。山登りは受験に、そして人生に例えられるのも合点がいきます。
日本の山は高くても3,000m級、それに較べて世界の山々は8,000m級が14座あるヒマラヤ山脈を始め、日本より遙かに高い峰々が名を連ねます。だから日本の山登りは簡単、と位置づけることは出来ません。
日本人なら『山!』と言われてすぐに思いつくのは富士山だと思います。一見穏やかな山に見えますが、厳冬期では周りに風を防ぐものがない独立峰のため、台風のような強風が終日続くことも稀ではありません。その風にあおられてバランスを崩せば命の保証はありません。『冬富士はヒマラヤの味がする』とは富士山で強力(ごうりき 重い荷物を背負って運搬する人を指します)を長年続けた方の感想だそうです。
因みに、日本国内における最低気温、1位から20位まで一つの事例を除いて全て北海道なのですが・・・その一つの事例が富士山なのです。1981年2月27日、-38.0度という記録を出したそうです。そこに強風が吹けば体感温度はどれほどになったのか、想像が付きません。また、日本における最大風速(1942年4月5日、秒速72.5m)、最大瞬間風速(1966年9月25日、秒速91.0m)などの記録も富士山で出されています。
また、魔の山として有名なのは上越国境に位置する谷川岳です。この山は最高峰が2,000mにも満たない山でありながら、世界有数の豪雪地帯であることや世界屈指の岩壁群を持つ山でもあります。そして1930年代から2010年代にかけて800名を越える人命が失われています。この人数は同期間の8,000m級14座で亡くなった合計人数600名余を見ても傑出して多い人数だと解ります。
話が脱線しそうなので元に戻しましょう。進路選択において簡単な方法はないと思います。単純に標高(=偏差値)でその難しさが較べられるものでは無いからです。入試だけを切り取って考えると要求点数の高い学校の方が大変だと言えなくもないのですが、その後の進路までを俯瞰で見れば決して一概に言えないのではないかと思います。
だからこそ、皆さんが志す志望進路に対してもっと胸を張って正々堂々と努力をしてほしいと思います。高校時代、日本史の先生にこういう言葉を教わりました。『キミたちは大学に進学する。その際に公衆の面前で校歌を歌えるような大学・進路を選んでほしい。自分が目指した大学・そして学んだ大学に誇りを持ってほしい』
この言葉を皆さんに是非とも伝えたいと思います。