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280 Be a Cool Lady!

280 Be a Cool Lady!

私がみ春野の教室に赴任したのは2010年の秋でした。初めて出勤した日は後期中間試験の対策を行っていて、中学1年生のグループは日本地理、県庁所在地をみんなで当てっこしていました。『この学年はみんな元気が良いな。お互い刺激し合って勉強出来ているな』これが私の第一印象でした。

その中の一人、とても繊細な感じの生徒さんでした。恐らく新しい教室長(私のことです)に対して警戒心を持っていたようでなかなか心を開いてくれませんでした。これは中学校を卒業する前に話してくれました。しかし、3ヶ月・半年と時間が経ち、中学2年になる頃には心を開いてくれるようになりました。

この生徒さん、英語に強い興味を持って取り組んでくれました。英語に興味を持つ生徒さんの多くは小学校の頃から英会話に通っていて・・・と言うパターンが多いのですが、この生徒さんは中学に入ってからスタートさせて後に十二分な英語力を付けられたのです。学校のテストはいつも90点以上、いつも多少の減点が出てしまうのは残念でしたが、そこまで望む必要はないと思っていました。英語の力は十分、と示せているからです。

高校受験では自分の進路を納得するまで考え、その上で周りの意見を受け止められる生徒さんでした。また、受験勉強では『当たり前のことを当たり前に』出来る生徒さんでした。決して特別なことをやったわけではないのですがこの生徒さんに関しては受験で全く心配する必要がなかった、そんな生徒さんでした。

この生徒さん達の学年で思い出深いことがありました。この学年の生徒さんはみんながとても仲良しでお互い励まし合って受験に臨んできました。しかし、たった一人だけ公立の後期まで残ってしまった友達が出ました。そこで受験が終わった生徒さん同士で話し合い、残ってしまった友達が塾で授業の日は必ず誰かが自習に来る、と約束したそうです。本来なら『受験が終わった!さぁ、遊ぶぞ!』となるはずが、結果的にほぼ毎日、受験が終わった生徒さんも全員が自習に来て仲間を励ましていました。結果として全員が一番望んだ進路を勝ち取ることが出来ました。私にとっても思い出深い受験学年となりました。

高校に進んでからも中学校からの部活動を継続して行い、最後は副部長として部活動の運営にも参画していました。私も個人的にその様子を見に行き、楽しそうに、でも真剣な眼差しでやっている様子を頼もしく思いました。その上、学業でも驚くほどの評定を取り、指定校推薦で大学に進みました。大学進学に当たっては少しだけ相談に乗ったのですが、彼女の持ってきた評定を見て驚いた様子を見せないようにするのはかなり難しかったと記憶しています。

大学生になってからは講師として教室に戻ってきてくれました。中学生の時に見せた繊細さは細やかな気遣いに成長し、彼女がいる時といない時では生徒さんの様子が全く違うようになるまで成長していたのです。また、生徒さんとも積極的に交流することを心掛けてくれたので特に女子生徒さんの本音を上手に引き出し、心理的ケアをさり気なくしてくれたことはありがたいことでした。

この頃になると当初の警戒感は全く見せずに何でも相談してくれるようになりました。大学の真面目な話から普段の話、最近買ったバッグの話や面白動画など・・・ これはひとえに彼女の成長がもたらしたものです。私からしても教室運営の相談から最近のトレンドまでこんなに何でも話せるようになってくれるとは思いもせず、ありがたく思っています。

彼女は中学生以来、語学留学したいという夢がありました。私自身が海外生活や留学のアテンド経験があったので事あるごとに色々な質問を受けました。並行して大学との協議や英語力のブラッシュアップなども欠かさずに行ってきました。今の大学生はただでさえ大変なのにそれら全てを自分の力でやり遂げた彼女の意志に感服しました。

2018年8月、いよいよ彼女の念願が叶い、カナダへの留学に出発します。最後の授業では生徒さんと名残惜しそうに一人一人と話し込んでいました。お互いに涙を堪えながら接していたのは感動的でした。私はその話に割って入ることが出来ませんでした。

小欄の表題は彼女が旅立つに当たって私から餞(はなむけ)の言葉です。より一層輝きを増した姿で再会出来る日を心待ちにしています。