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276 夏と反戦

276 夏と反戦

以前、高校受験生の生徒さんから『先生にとって反戦運動ってどんなこと?』と聞かれたことがあります。私はとっさに答えられなくてその返事を一日待って貰いました。反戦は大事なこと、しかしそれを日々の生活に反映させていくことはなかなか難しいことです。

『一日待って』が二日になり、三日になりました。その間ほかの生徒さんからも『先生でも宿題が出来ないことがあるの?』と揶揄されたり笑われたりしながらも真剣に考えました。そしてようやく私なりの、学習塾運営者なりの解答を見つけることが出来ました。

『日々みんなが勉強してくれることこそが反戦運動なのではないか。知・智の欠けた状態で裕福になろうとすればそこには違法や暴力が生まれる。それは小さな戦争と同じだと思う。反対に知・智を持って周りの人々を幸せになるようにすれば自然と富は集まる、必然的に富の奪い合いである戦争は起きないのでは・・・』

質問してきた生徒さん、私の解答が極論とは知りつつも納得してくれました。そうか、勉強することは反戦なんだ・・・こう呟きながら帰路につきました。中学3年生になっても勉強する意味を考えられるこの生徒さんは立派だと思います。

また、夏になると反戦を掲げるテレビドラマやイベントが多くなります。生徒さんにとっても我々大人にとっても平和と反戦を考える良い機会です。そんな中、前日に見たある映画に触発されてメチャクチャ勉強に集中した生徒さんがいました。『勉強を心ゆくまで出来る今の私達って幸せだよね・・・』

普段はなかなか声を大にして言うことも難しいのですが、自分の感動を素直に行動や言葉に出す気持ちは大事にしてあげたいと思っています。それは生徒さんのためだけではなく、我々大人に瑞々しい気持ちを思い起こさせてくれる一服の清涼剤のようだからです。

この章は私らしくビートルズの逸話を一つ。インタビューで『ビートルズの歌には反戦歌がないようだが・・・?』と尋ねられた時、彼らは『ぼくらの歌は全て反戦歌さ。ラブソングが反戦歌であってはいけない理由はないと思うよ!』とのこと。ビートルズは1965年に多大な外貨獲得の貢献を認められ大英帝国彰勲章(MBE勲章)を受けていましたが、メンバーの一人は『イギリスのナイジェリア/ビアフラでの紛争への関与、ベトナム戦争におけるアメリカへの支援』などを理由に受勲を返上しました。国家を相手にした痛烈な反戦運動ですね。

反戦にはそこまで強いポリシーが求められるのか、このことを知った時に私は強い衝撃を受けました。そして皆が平和に暮らせている現代日本が実は理想郷、桃源郷なのではないかと思います。その上でささやかでも微力でもそれらを更に豊かにしていくために教室を運営していこうと思います。