2018年春の大学スポーツで非常に残念なことがありました。N大学対K大学のアメリカンフットボールの試合で学生らしからぬラフプレー・反則行為があり、相手チームのクォーターバック(QB)が負傷退場する事態が起こりました。この件については様々なネット動画が上がっていますのでご覧頂くこともできるかと思います。その上で、この反則は『やむにやまれず』や『ついうっかり』という反則ではなく、あくまで意図した反則・相手を傷つけることを目的とした反則であることが解ります。
私が非常に残念、と思ったのは選手がラフプレーをしたこと以上に、ラフプレーを反則として取られてその選手が退場した際に指揮官が選手を労うような様子があったこと、そして試合後の会見で『ウチは弱いから厳しくプレッシャーをかけないと勝てない』とのコメントに対してです。見方によっては『ケガ・故障を伴うほどの相当危険な反則行為を指揮官が指示した』とも取れる発言をしているのです。
ここでN大学の指揮官の明らかな誤認が二点挙げられます。一点目は退場までさせられるようなラフプレーに是認できることは何一つないことです。教育の一環で行っている(大学部活動は教育の一環として実施されるものです)活動に対しての冒涜であり、厳しいプレッシャーと反則行為(しかも相手を傷つけるような)は全く違うものです。
反則を犯して退場を命じられた選手は全日本選抜にも選ばれている選手だそうで、そういった選手を正しい方向に導けない指揮官の無力さに苛立たしさを感じます。仮にその選手が性格的に粗暴であったとしてもそれを正しく導くのが指揮官の仕事なのではないかと思います。この件でこの選手の将来がなくなってしまうことに無念を感じずにいられません。孔子に出会えた子路、とはならなかったことはその学生にとっての不幸なのではないでしょうか。
『97章 試合放棄に思う』では大学体育会の「部活動より大学の授業が大事」との切なくも正しい判断に喝采したものですが、N大学の指揮官・指導者に対しては唾棄すべき行動が重ねられており本当に残念です。更にそれらの人材をアメリカンフットボール部の指導陣に任命した大学や試合運営管理を行っていた学連・競技連盟などの関係各所も責任を問われて然るべきです。そして何より、中高生はこういった部活動を決して見習わないで欲しいと切に思うのです。
指導、と言う面では、私自身も生徒さんに対して正しく導けているか日々反省と後悔の繰り返しです。普段は務めてフランクに接するよう心掛けていますが、それが妥当ではない言動に繋がっていないか、少しでも高みに導けるような要素があるか、などなどなど・・・ しかしそれ一辺倒だと生徒さんは息苦しくなってしまいます。そのさじ加減が非常に難しく、日々顧みるようになるのです。
さて、アメフトに話を戻しましょう。日本にはアメフトのプロリーグがないので、アメリカンフットボールの本場であるアメリカ合衆国のプロリーグ(NFL)の傾向をご紹介しましょう。NFLは激しい肉弾戦が大きな魅力です。しかし現在は選手の安全を第一に考えた運営方針・ルールに変更(最近ではリターンにおけるルール変更等)されています。
肉弾戦を望む熱狂的なファンや視聴者からの苦情も多く・・・とはならず、選手を守る意識が全ての関係者(ファンや視聴者を含めて)で共有されており、不要なラフプレーが起こりにくい(それでも起こりますが・・・)環境作りを行っているように感じます。
そして何より大切なことですが、全ての指揮官が相手を傷つけるようなラフプレーを否定して戦っています。そしてその考えがチーム内や下部組織(カレッジリーグやハイスクールリーグ含め)に波及されています。そこが意識の差、となるのではないでしょうか。日本はまだまだスポーツ後進国だと思います。