中学受験専門の学習塾を舞台にした漫画が話題を呼んでいるようですので、私もそれに乗り遅れじと早速読んでみました。かなり誇張されたような箇所も散見されますが、概ね間違った描き方はされていないと思います。
東京の私立中学受験熱は2008年から2015年は受験率が落ち込みましたが、以降は上昇の一途をたどっています。2020年の大学入試改革を控え、今後は受験熱が加速することに異論は無いようです。そのような背景でより早く確実に自分の進路を掴み取るための術としての中学受験、これは是認すべきなのかな…と思います。
『すべきなのかな…と』などと歯切れの悪い表現になったのはどうしても中学受験では『保護者の希望』が生徒さんの希望にすり替わってしまうことを危惧しているのです。その中で『親の歩ませたい道』と『自分の志す将来』にギャップが出来てしまうことが往々にして指摘され、私自身もそれをまざまざと見せつけられたことが何度もありました。
作中で一箇所、『我が意を得たり』と思った箇所がありました。ご家庭からの『好きなスポーツを中断してまで中学受験させる必要は…』という意見に対して『中学・高校と伸び盛りの時期に高校・大学受験で競技が出来なくなる方が競技者として致命傷なのでは…』という指摘、私も同様に思います。
高校受験において上位校ほど中高一貫の傾向を強く出しています。私立高校にとっては大学進学実績・合格実績こそが学校運営の命運を握るものであれば、より効率よく合格させることの出来るシステムを採用します。作中にもあることですが、東京の男女御三家6校のうち、高校募集を行っているのは1校のみ、その1校も学年の半分は内部進学生という実態があります。つまり、こういったレベルの学校では『中高一貫教育こそが理想《これがすなわち有名大学への高い合格率を指します》を具現化する』という理念で運営しているのではないでしょうか。
一つ不安に思うことは『漫画』という訴求しやすいメディア、しかも人気の青年誌に分類される週刊誌に掲載されることは世論に対しては非常に強い影響力を意味します。だからこそ表面だけを見て『私立中学=○、公立中学=×』という単純な図式だけではなく、『いかにしたら我が子の将来は切り開けるか』と考えるきっかけにして欲しいと思います。
教室に第一巻を置いています。ご興味のある方はお声掛け下されば貸し出しています。