小欄190章で小学英語について述べました。これらの全容が明らかになるにつれ、『ビックリ!』『唖然!』となってしまう毎日です。今回は190章で述べた内容を追補していきます。
最初にスケジュール、実施時期について確認しましょう。2018年度・2019年度の2年間は小学校での移行措置が始まります。この期間は文部科学省作成の新テキスト『We Can』が使われます。中学校の移行措置は2019年・2020年に実施されます。使用教材は各教材会社別で対応を予定しています。そして、2020年から小学生が、2021年から中学生が一斉に改訂内容の授業となります。
私立中学入試については全容がまだまだ見えていません。2015年度入試で英語入試を実施した学校が33校だったのに対し、2017年度では95校となりました。これは全体の約3割に相当する数値です。しかし、学校によってレベルがまちまちな上、英語を選択する受検者も少ない現状ではまだ動向を注視しなければなりません。
千葉県の私立中学では市川中学校が2017年から一般入試に英語を採用したことはトピックスとなりました。その反面で東京の御三家レベルでは採用の動きはなく、『国算理社』の四科目メインは変わらずとなっています。特に『英語教育に自負のある学校ほど入試科目に採択しない』傾向があるように感じます。
従って中学受験における小学英語は上記の通り、もう暫く動向を見守る必要があると思います。
小学校の英語学習のメインは『話す』『聞く』『書く』『読む』の四本柱を掲げています。これは旧来の文法偏重教育に歯止めをかけ、受験技術に留まらない英語教育を目指したものと言えるのではないでしょうか。その結果、『小学校では文法を教えない』という前提まで立てられてしまいました。つまり『I like dogs.』と『He likes baseball.』の『s』の違いについては説明を付けぬまま学習を進めるそうです。
因みに、『三人称単数・現在形のs』は中学1年生の終盤で学習します。この中学1年終盤という時期、英語学習にとって非常に大切な、デリケートな時期なのです。学習内容としても前述の『三人称単数・現在形のs』『進行形』『過去形』と厄介な単元が続きます。それに伴って4人に1人は英語が分からなくなっている・授業について行けなくなる時期と言われています。
小学校で下地を作ってからの中学英語となれば、例え小中連携しない内容とは言え、中学生で学習する内容が難化することは容易に想像できます。また、学習すべき単語数も爆発的に増えてしまいます。こうなってしまえば、これまでのように『解らなくなったから対策を考える』方法はかなり無理のある方法と言わざるを得なくなります。また、小学生でもやるべき科目が増えたことでより早い時期での対策・準備が必要となるのではないでしょうか。
さらに中学英語の文法事項も増加される見通しとなっています。従来は高校で学習していた『原形不定詞』や『現在完了進行形』も中学で学習することとなります。単語については190章で述べたとおりですが繰り返して記します。小学校で約700個、中学校ではそれとは別に1,400個程度とされています。高校受験では2,000~2,500個程度の単語力が求められることになるのです。
さらに語彙学習について述べると、連語・慣用表現の例示がなくなり、『活用頻度の高いもの』という指定になります。平たく言えばこれまでは『熟語』として学習したものが一旦白紙化され、うっすらとした印がついた膨大な量の連語を覚えるようになるようです。
私は塾不要論者です。心の内では『小学生なら友達と公園で遊んだり習い事を一生懸命やるだけで良いのではないか』『小学生なら塾へ行っての勉強より家で良書をじっくり読む方が役立つのではないか』と思っていますが、現実はそれを許してくれないようです。
小学英語の本格的開始は英語という技術を得るためとは言え、この指導要領改正は小・中学生の学習形態に大きな影響を及ぼしています。言い換えれば英語と上手くお付き合いできれば勉強全般が上手く行くように思えてならないのです。