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149 寄らば大樹の陰?

149 寄らば大樹の陰?

大学生の就職活動で指針とされているのは大企業の採用動向です。大学生にとって大企業で働くことは強い願望であり、日本経済の中枢に身を置きたい気持ちは健全に思います。

日本には上場企業が約3500社あります。いずれも大企業と呼ばれる大きな会社ですが、そういった会社に就職することが幸せに直結するかと問われれば大きな疑問です。

大企業は業界のリーディングカンパニーとしての自負や社会的責任があったはずですが、昨今では大規模な会社でも大きな不祥事が頻発しています。その結果社員が大きな損害を被ったり会社経営自体が傾いてしまうことも目にするようになりました。

こういった状況になってしまうと冒頭の考えは根本から考え直さなくてはならなくなります。しかし・・・就活学生の心理として目を背けたくなることが多いようです。これほどの世情になっても『寄らば大樹の陰』にすがってしまうのが就活学生の心理だと思います。

『でも、そんな難しいことは解らないよ』という声が大学生から聞こえてきますが、対処法は極めて簡単です。中学生の社会、公民を読めば良いのです。高校生の現代社会や政治経済でも良いと思います。

こういった話をすると『実社会には教科書のごとき建前論は通じない』とおっしゃる方も出てくると思いますが、日本という国が法治国家である以上、法律は建前ではなく、実務として運用すべきです。教科書で解説している法律はかなり平易になっていますが、その趣旨は法律として機能させることができるのです。

かなり前の話ですが、元学生講師が『先生、相談があるんだけど・・・』とのことで教室に帰ってきてくれたことがありました。国立大学を卒業した元講師は上場企業に就職できたと志高く塾講師を卒業したのが強く印象に残っていたのですが・・・

元講師は理系研究職で採用されたのですが、聞くと劣悪な環境で早朝から深夜の業務でも仕事が終わらず、週に3日は会社泊まりということでした。もちろん、時間外手当(残業代)もみなし残業なので殆ど出ず、苦痛なばかりの時間を過ごしたそうです。

彼の話を聞くと、法定労働時間有休制度(これらは中学社会・公民の教科書に記載があります)について会社から適切な説明がなく、会社に都合良く言いくるめられたようです。彼曰く、『周りもそういう雰囲気だった』そうです。ワークライフバランスが完全に崩れている企業文化を持つ会社だったのです。

彼の去就については敢えてここでは述べませんが、中学生で習うことはこれほど重要なことなのだと改めて思いました。先日行った中3生のテスト対策でも似たような範囲の学習を行いました。その際『テスト対策としての社会科』に平行して『実学としての社会科』も習得して欲しいと思った次第です。