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146 登ってみれば… ~雲外蒼天~

146 登ってみれば… ~雲外蒼天~

富士山に登ったことのある方はいますか。昨今は世界文化遺産登録のお陰もあってシーズン中は大変な盛況、登山路が渋滞する状況ですが…

富士山は季候の良い時期に登るには遠望も効いて非常に快適です。もちろん、高山病の可能性などもあるので十分な準備と装備が必要になりますが、慣れた人と一緒であれば比較的親しみやすい登山コースなのではないでしょうか。

しかし気候条件の厳しいは山の表情が一変します。特に冬山になると風も強くなり上級者コースとなる山です。山岳愛好家の間では『冬の富士はヒマラヤの味がする』と言われています。

夏期シーズンでも雲が出ているときは辛い登山になります。遠望も望めず、細かい雨が降って体温も下がります。ハイキング気分で登れる山ではないことを痛感します。

しかし、雲が出ているときの登山にも爽快な気分をもたらしてくれるときがあります。雲中を抜け、雲海を目にしたときの爽快感は何物にも代えがたい神々しい風景です。そうして我々は『曇っていてもその上には青い空が広がっている』ことを身を以て学べるのです。

これを四字熟語にすると『雲外蒼天(うんがいそうてん)』と言います。この言葉の本意は『暗雲の外に出れば青空がある。様々な悩みや困難を乗り越えれば希望が輝く空がある』という激励の言葉です。同義語には『開雲見日(かいうんけんじつ)』『天上大風(てんじょうたいふう)』があります。

同様の言葉が英語でもよく使われています。『Sky beyond the clouds azure sky』

日本の四字熟語(中国起源のものも多いのですが)と同義の英文は少なくありませんが、表現そのものがこれほど近いものも珍しいのではないでしょうか。つまり世界中の人々は同じような経験を持っている人が多いのです。

この言葉は私が高校生の時、日本史の先生が最後の授業で教えて下さいました。授業中は無駄話をしない先生だったのですが、その授業が終わるとき、黒板にこの言葉を大書きされました。そして上記のような話をされたのです。最後の授業と言うこともあり強烈な印象でした。今でも胸に残っている言葉です。

受験生に限らず、勉強が辛いと思っている方は少なくないと思います。そんな方にこの言葉をエールとして贈ります。