受験にとって志望校決定に欠くことのできないツールとして偏差値があります。現在自分がいる位置から志望校までの距離を表す物差しのようなものです。しかし世の中ではどうも違う使われ方となっているようです。高校受験に主眼を置いて論じていきましょう。
違う使われ方の最たるものが『偏差値を使った学校の序列化』です。A高校の偏差値は55です、B高校の偏差値は60です、B高校の方が『良い学校』と評されます。これは全くのナンセンスであって『偏差値が高い≡良い学校』とはならないのが現実です。しかし…世の中はそう思っていないようで非常に残念です。
また、入学時に要求される偏差値の高い学校ほど良い進路となる、という幻想もなかなかなくなりません。特に公立高校は教員の異動が9~10年ごとに行われ、進路指導などで優れた手腕を発揮されている先生が異動すると途端に…と言うことが頻繁に起こります。しかし入試においてそれが反映されるまでにはタイムラグがあります。
更には大いなる勘違い、というものもあります。目指す校風に『自由』と入る学校に時折見られる(必ず見られる、と言うわけではありません)現象ですが、陰で『○○高校パラダイス』などと揶揄されていることがあります。自由な校風にあこがれて入学する生徒は非常に多い、だから高い人気、従って入学時に要求される偏差値は高い、しかし進路実績は…となります。こういった状況に陥っている高校は進路より『高校3年間を楽しく思い出深く過ごす』ことに重きを置いているように感じます。そこで3年間青春を謳歌してしまうと…
大切なことなので繰り返しお伝えしたいことがあります。志望進路決定の第一要素は『入学時に要求される偏差値』ではありません。あなたの望む将来を掴み取るために最適かどうかです。ベストな将来をつかむために必要なもの、それが偏差値であることを念頭に置いて欲しいと思います。つまり『目的は望む未来』、そのために『手段としての要求偏差値』だとご理解頂きたいのです。
また、皆さんが一番身近に接しているのが模擬試験における偏差値です。入試の始まる1年~半年前ぐらいからは皆さん模試を受けると思うのですが、その時から偏差値や合格判定に一喜一憂していませんか? それは…ナンセンスです。入試日までに志望校の求める数値になれば良い、それだけのことです。
偏差値や合判より大切なことは『自分の得手不得手を見つけ、それを改善する』ことです。自分の試験結果を自分で分析するのはなかなか難しいことですが、そちらの方がずっと大切なことなのです。そしてそれが正確にできることが偏差値や得点を伸ばす近道なのです。
模試が終わったあとはどうしてものびのびとしたくなり、試験問題をきちんと見直す生徒さんは少ないように思います。しかしそれでは『解けなかった問題は次も解けない』となってしまいます。それでは模試を受けっぱなしです。きちんと最後をまとめるまでが模試としたいですね。
また、多くの受験生が『偏差値が伸びなくて…』と悩む時期が必ずあります。伸びていないのは必ず原因があります。その原因が解消されれば『勉強した分だけ数値は伸びる』ようになります。この点についても試験後の自己分析をきちんと行えば対応できますね? 特に『基本ができていないのに応用問題ばかり解こうとする』受験勉強にはこの現象が顕著です。偏差値を伸ばすには何を置いても基本の充実が求められます。
小欄103章『公立高校倍率 ~数字のマジック~』にも関連しますが、『学校選びと偏差値』も数字のマジックと言って良いものだと思います。高校を選択する際に比較する項目が分からず、感覚で選びがち、その中で『数字になっているもの(≡偏差値)』は比較しやすいことから多くの方が偏差値だけで学校を決めがちです。しかしそれは進学先を知らないで進むことになってしまいます。結果として『学校が合わない』ことも懸念されます。
偏差値は志望校選定において一要素に過ぎません。だからこそそれのみで決めるのは少し寂しい気がします。もう少し広い視野で志望校を選ぶことが必要だと思います。
『偏差値』という言葉から起想されることを雑多に書き並べてみました。本章は少し整理の付かないものとなってしまいました。ご通読頂きありがとうございました。