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133 己の弱さを受け入れる

133 己の弱さを受け入れる

もう2年ほどになるのですが、私の元でボイストレーニングをしている方がいます。言うなれば音楽の生徒さんです。それなりにステージ経験も積んでいて一通りのことはできるのですが・・・

その方に一つ決定的に欠けていることがあります。それは声量です。ある程度の不足であればマイクワークや音響機器で補正することもできますが、一定以上欠けてしまえばいくら科学技術で補っても貧弱な表現となります。声量不足はトレーニングで改善できるのですが、その方はそこから目を背けているようです。その結果、他の人と共演となった際にかなり悔しい思いをされています。それにもかかわらず・・・

これは教室の中でもちょくちょく見られることです。『単語力が足りない』『計算力が・・・』と自覚していてもそれをカバーするための取組をしていない、それ以前に自分の弱点に対して目を背けている、蓋をしているのです。

逆に自分の弱点に目を向けなければいけないと気づけた生徒さんは絶対に伸びます自分の弱さを直視する強さが付いているのです。伸びないわけがありません。

入塾する生徒さんの殆どはそれらに対する指摘と矯正から着手することが殆どです。中にはそこに嫌気がさして・・・というケースもないわけではありません。しかし弱点を放置したまま勉強を重ねることはザルで水をすくっているようなもの、努力しているようで何の成果も得られないのです。塾としても実にならない努力擬き(もどき)をさせるつもりはありません。

以前、卒業する生徒さんに『あの時苦手なところを徹底的にやって良かった。やっているときは気持ちよくなかったけど、できないまま高校生になっていたら大変だった』と言われたことがありました。その当時はその生徒さん一人だけ何年分も遡っての勉強を進めさせ、指示をしているこちらの胸も痛みました。しかし『できないからやらない』は私の中の選択肢にはありませんでした。生徒さんも苦しいながら私に食らいついて来てくれました。その生徒さんの頑張りに敬意を持ったものでした。

自分の弱点を認めることは社会に出ても必要なことだと思います。私自身も自分の弱さや改善しなければならないことに対して日々奮闘しています。その中で良い教室・良い授業ができるようになればと思っています。