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92 当用漢字と常用漢字

92 当用漢字と常用漢字

漢字を学習するに当たって当用漢字常用漢字という言葉を目にすることがあるのではないでしょうか。この言葉、本来の意味はご存じでしょうか。

言葉としての歴史は浅く、太平洋戦争終戦後に日本が戦後改革を行っていく際出来た言葉です。

日本を占領した連合国軍最高司令官総司令部(GHQですね)はいずれ日本の言語から漢字を廃し、表音文字(平仮名・片仮名など)へ統一することを考えました。外国から見ると日本の漢字は非常に難解なものでGHQにとっては煩わしいものでした。GHQの中には『日本語は漢字が多いために難しく、そのために識字率が上がらない。それが民主化を遅らせている原因』という偏見もありました。

しかしそういった理由で漢字を一斉に使用禁止にしてしまえば日本が大混乱に陥ります。その経過措置としてよく使われている漢字(使用頻度の高い漢字)を限定的に『面は使して良い漢字』と定めたものが当用漢字です。1946年に1850字が指定されました。

しかし、漢字を全廃することは日本の国家機能が麻痺させることと指摘され(漢字は文学だけではなく、法律・経済から理数研究分野まで使われています)、また、漢字のメリット(日本語には同音異義語が多いことなど)もある程度見直され、漢字の全廃は回避されました。

1981年、当用漢字に95文字を追加、更に一部の改訂を加えたものとして常用漢字としました。常用漢字が運用されるに当たって当用漢字は廃止されています。

そして現在では『漢字は文化』と言わんばかりに欧米諸国でも漢字のロゴTシャツも頻繁に見られるのは皮肉なことです。

小学生・中学生、場合によっては高校生・大学生や社会人まで、考えようによっては『漢字は皆を悩ませるもの』と映りがちです。
しかし時には漢字を使える世の中を俯瞰で見ることも大切です。

以前も記したことですが日本は文学の国でもあります。そして日本語の源泉の一つは漢字や万葉仮名にあります。
それらは次の世代に引き継ぐべき大切なものです。私たち一人一人が大事に使わなければなりません。