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75 目指す高みに立ち向かう

75 目指す高みに立ち向かう

LS WILLでは入会時に志望進路を伺います。必ずしも皆さんに確たる志望校がある訳ではありませんが、『大学まで行きたい(行かせたい)のでそれが叶う進路』『兄・姉(場合によっては従兄姉)が○○高校なのでそこに類するような学校』など、漠然としたものであっても志望進路は皆さんお持ちのようです。

そんな中で中学3年生を迎えて会場模試を受験するようになると『自分の目指していた志望校と自分の模試結果はこんなに違うのか』という結果が出ることがあります。特に中学校の中では上位3割前後に入って5教科の通知表内申が20前後の生徒さんによく見られるケースです。多くの場合、志望校レベルを下げてしまうのですが…

これで思い出すのは私がこの業界に入って最初の都内公立中学校の3年生です。この生徒さんは夏期講習明けに入塾してきました。自分自身の時代と違って相対評価だから内申点はインフレだと言い聞かせて通知表を見ていたのですが、3年間オール5で135点満点の通知表を持って来ました。もちろん3年間オール5は評価すべき成績です。他の生徒さんより頑張ったからこその結果でしょう。しかし、それは必ずしも学力・得点とは結びついていないのが現実でした。その生徒さん、都内でもトップクラスである付属系私立高校を志望していましたが、9月時点の模試結果から見ても現実的ではありませんでした。私自身進路指導についての経験値もまだまだ乏しかった時期で周りの先輩から助言を得るなどしてこの生徒さんに最適な進路をどう提示するか試行錯誤していました。率直に言ってしまえば『どうやってその志望校を下げさせるか』を考えたのです。

しかしその試行錯誤は生徒さんの言葉であっけなく雲散霧消しました。
『先生、この間の模試結果で志望校は無理だと思っているんでしょ? でもね、どうしてもそこに行きたいから考えられる方法は全て取って下さい。これから先の勉強はいくら厳しくても大変でも良いです。自分の未来を切り開くための努力ですから。その上で併願校の対策もきっちりやります。だからお願いします。』
私は逃げている自分の考え方を強く恥じました。少なくともこの件については中学3年生である生徒さんより未熟な考え方をしていたのですから…

そこからは生徒さんも私も、そして周りの講師も目の色を変えて建前抜きで取り組みました。何より生徒さんと教室の目指す方向がピッタリと一致していたので今の私から見れば伸びない訳がなかったのです。それでも12月頃までは得点が伸びずにヤキモキしたのですが、これはこの時期までに基本が仕上がっていなかったため当然の結果だったのです。冬期講習は朝から深夜まで教室に缶詰でしたがそこで基礎が固まり、年明けの模試では今までにない伸びを見せてくれました。

最終的には9月の模試から25以上も偏差値を伸ばし、当初の志望校への入学を果たしました。併願で受験した学校も全勝でした。(これは偏差値だけではなく出題傾向の近似した高校を選んだことも一因だと思います)

この生徒さんを半年見て私が学んだことは次の2点です。
1点目、どんなに得点が足りなくても誠実に学習を重ねれば伸びるもの、それを諦めてはいけない点です。
2点目、自分の偏差値から行ける学校を探すのではなく、自分が行きたい学校の偏差値に自分がなれば良い、それが受験勉強なのだという点です。

そんな思いから、教室には『一度掲げた目標は如何なる状況下でも必ず成し遂げよう』という教室訓を今でも掲示しています。それは生徒さんだけではなく、自分自身への戒めとして…