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43 記念受験

43 記念受験

以前お預かりした生徒さん、小5の終わりごろに入会されたのですが、入会した趣旨がはっきりしないご家庭でした。学習が遅れている訳でもなく、学習習慣がついていないわけでもない、言ってみれば優等生でした。そうなると可能性として中学受験が浮上してきますが、これについてはお母様が強く否定されました。そんな状況での入会でした。

お預かりして2~3か月が過ぎたころ、案の定お母様より中学受験が希望であることを打ち明けられました。それも『都内のトップ校を記念受験だけさせたい』とのお申し出でした。
記念受験とは「合格したら儲けもの」という軽い気持ちで受験する学習塾業界の業界用語です。もっともこの言葉は既に市民権を得ているようで、保護者様側からこの言葉を口にされるケースも出てきました。
周りに受験することが解っていて、それで不合格なら格好悪い、そのような気持ちは理解しないわけではありません。しかし中途半端な気持ちで合格できるほどトップ校は甘くありません。お預かりする塾側も覚悟を決めて取り組まなければならないほどです。従って「合格したら儲けもの」という気持ちで受けても結果は知れていると言っていいでしょう。

高校受験や大学受験と違って中学受験の記念受験はお子様を潰しかねない危険性も併せて検討しなければなりません。「合格すれば儲けもの」、裏を返せば十中八九の確率で不合格となります。
その一方でいくら記念受験とは言っても直前(3か月から半年前ぐらい)には学習ギアがきちんと上がっているのです。普通の受験だろうが記念受験だろうがお子様は必死になることには変わりありません。なぜなら本音は合格したいからです。しかしギアが上がるまでの時間をきちんと過ごせなかったハンデはのちに相当な負担となるのです。
そのように一時期とは言え一生懸命に取り組んだにも関わらず、そのお子様にとって人生初めての関門で不合格という烙印を押されたらその後は… 如何なものでしょうか。

お子様が冷静に自己分析できる年齢になっている高校受験・大学受験と異なり、中学受験において私が一番配慮している点は『必ず私立中学に入れる』ことです。受験勉強はしました、受験はダメでした、地域の公立中学に行かせます、では中学受験をしたお子様のやる気を削いでしまい、プライドを傷つけてしまいます。それは今後に大きく影響を及ぼすのではと考えています。
幸いにして、私立中学受験をして公立中学校に行かざるを得なかった生徒さんは私が指導した中で今まで出ていません。それは自分の中で誇るべきことと思っています。

一方、高校受験や大学受験は皆一様に受験をする訳ですから受験に対してこそこそする必要はありません。あまりに安全志向の生徒さんにはガツガツと取り組むためにもチャレンジ校の受験を検討するよう提案することがあります。それは時として生徒さんの潜在能力を大きく引き出すことがあるのです。生徒さんの成長度合いによって進路指導方法も大きく方針転換することが大切なポイントです。

冒頭の生徒さん、色々と話し合って最終的には現実的な(とは言っても相当頑張らなくては入れない水準の)私立中学を志望校にして約1年みっちりと取り組みました。
その間、高校卒業後の志望進路・入試における出題傾向なども踏まえてチャレンジ校(図らずも冒頭の都内トップ校となりました)の設定と併願作戦を練り、最終的にはチャレンジ校に堂々入学を果たしました。
やる気と覚悟を持って取り組めば手が届かないと思っていた夢ですら実現することを体感してもらえたことは素晴らしい経験になったのではないでしょうか。

先日、偶然お母様とお会いした際に高校生活も充実しているとのお話を伺い、嬉しく思いました。お母様からは『大学受験についても相談したいんですが…』という嬉しいお申し出も頂きました。

LS WILL は高校部の設置は致しませんが、進路相談はいつでもご利用いただけます。お気軽にお越しください。