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607 職人さん

607 職人さん

日本の消費動向はどうしても大量生産・大量消費が主流です。これは経済システム上、致し方ないものです。大量生産によって日用品が安価に提供されることにより安定した日々を送ることは理に適っています。

しかし他方では日本は職人の国という認識も強く残っています。高度な技術力は大企業であろうと町工場であろうと関係なく存在しています。『下町ロケット』でも広く認識されるようになりました。

私自身は大量生産によって安価に生産されるものの中で生活しています。『特注の○○』的なものはあまり興味がないようです。しかし、職人さんが私のために作ってくれたものにはそれなりの意味があることは学習しています。

 

一つは剣道の防具。これは五反田にある武道用具店で拵えて貰ったものです。剣道の防具、現在主流は京風防具ですが、こちらのお店では水戸防具(というのでしょうか・・・?)をお店で作っています。

採寸から動きの癖、骨格、はたまた剣風まで職人さん自ら確認しながら作って下さる防具、私に合わないわけがないのです。一般的に防具は使い始めて3ヶ月程度は慣らしていかないと身体に馴染みませんが、この防具だけは着けたその時から身体の一部になってくれる感覚です。

もう一つはギター。こちらは千葉市内の工房で作って貰っています。この方、世界的にも有名なルシアー(弦楽器製作家)でその気になればたくさんのお弟子さんを取って・・・と出来る方ですが、自分の目で見て自分の手で作ることに拘っている方です。

この方は一流ミュージシャンからもたくさんのオーダーを受けていて私ごときのマシンなど受けなくても・・・と思うのですが、いつも快く受け付けてくれます。マシンの不調にも飾り気なく真摯に対応して下さり、心強い限りです。

 

このお二方に共通していることが二つあります。一つはユーザー個々をきちんと見ている点。『前の人がこうだったから多分次も・・・』という先入観は一切なく、その人(ユーザー)に一番使いやすい形を提案してくれます。また、それには互いの深い信頼関係も大切になると思います。

もう一つは高い技術力です。技術のない職人さんに物事を頼むと『それは見た目が悪くなるからやらない』などと撥ね付けられる(そこには職人さんの技術不足が見え隠れしています)ことが多いのですが、上記のお二方は多くの引出しを開けて依頼内容を叶えて下さいます。

 

前置きが長くなりましたが、私は学習塾における職人でありたいといつも考えています。各々の生徒さんを個として見て、それに最適な方法を施し、最善の進路を示せるようにしたいと思っています。

 

蛇足ながら上記のお二人、もう一つ共通点があります。それはきちんと注意して下さること。『そんな扱いしたらダメだよ!』とはなかなか言いにくいものだと思います。しかしそれがあるからこそ信頼関係が築けるのではないか、最近そのように思うのです。