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435 大学入試奮戦記

435 大学入試奮戦記

大学入試改革についての紆余曲折が未だに続いています。そんな中、『大学、合格したよ!』と満面の笑みで教室まで来てくれた先輩がポツポツと始まりました。本当に嬉しい瞬間です。良かったね、この言葉がよどみなく出てきます。

最近、大学入試改革について諸々考える機会があります。英語の4技能検定と民間試験の活用、記述式問題の採点方法など非常に難しい問題ですが・・・卒業生の高校1・2年生に『キミの高校ではどういう対策を取っているの?』と尋ねると大体は『あまりやっていない・・・』と煮え切らない返事しか帰ってきません。まぁ、これだけ混迷してしまえば現場でもどうやって良いか判断は付かないのではないでしょうか。

そこで問題を原点に戻してみるとおかしな矛盾に気付きます。つまり、入試改革で課せられているような能力を学生に求めるならそれは大学で養成すれば良いのでは・・・という疑問です。センター試験などの『官製試験』で選抜せずとも自校独自で入試を行なえば良いだけの話です。費用的な負担云々はありますがそれが『大学の自治』だと思うのです。

現在の入試制度改革で新たに求めようとしているもの(考える力、表現する力など)はまさに大学4年間できちんと磨き上げるべき力だと思うのです。高校生までは知識を整理するインプット型学習がメイン、そして大学生ではそれらをアウトプットする方法を知る期間としても良いのではないかと思っています。そうすると『現在のシステム(=現行のセンター試験)』は決して悪いものではないと思います。

そうなると現在の大学教育システムは大幅に改めなくてはなりません。授業・講義内容、試験の質、レポートの内容・・・これらを全て改めるためには莫大な費用が掛かります。しかしIoT技術の活用や民間企業などとの協力で多くの課題は解決されるはずです。今や大学というシステム・ステイタスが社会の頂点という立場にあぐらをかける時代ではないことに気付かなくてはならなくなっています。

センター試験、又はその後継試験では大学の序列化を強固にするだけで今後の社会にはあまりメリットはないようにも感じます。それなら大学側がそれを突き崩す独創性溢れた入試を展開すべきなのではないかと思います。もちろん、センター試験にもメリットがあって経営的に救われた大学も少なくありません。しかしこれから先の時代は受験者数を増やすためだけのセンター試験を求めていないと思います。

一方で軽視されがちな推薦やAO入試についてはこれまでの風潮を正して尊重されるべきなのではないかと思います。小欄でも何度か『推薦やAOで大学に入った学生は採用を制限する企業』が存在することをお伝えしましたが、それこそナンセンスです。推薦やAOで入学できるだけの成績を高校3年間できちんと取ったことをまず評価すべきではないでしょうか。

学習塾や予備校の中にも『一般試験で入学できると偉い。推薦やAOは・・・』と評価するところが未だに目に付きます。悲しいことです。いずれの入試方法であってもそれ相応の努力があってどちらが尊いと較べられるものではありません。

しかし、センターを含む一般入試で入学した学生と推薦やAOで入学した学生には学力差がある、これは認めなくてはなりません。学習期間が3ヶ月~半年ほど違うので致し方ないことです。それを補うために私は『大学は合格してもセンター試験は受けなさい。センターを申し込んでいなければ何か目安になる試験(学内試験・模擬試験でも検定でも良いのでは・・・)で目標点・合格点をきちんと取りなさい。そしてそのための努力をしなさい!』と大学合格に浮かれがちな卒業生に釘を刺すことがあります。それで殆どの先輩方は気付けるようです。

これから先の社会は『大学名での評価』から『大学で何を学んだか』の評価になります。その準備も大切なことです!