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398 オヤジの立場

398 オヤジの立場

先日来立て続けに学習塾運営業務とは全く無縁の知人に会う機会が重なりました。久しぶりに会う友達もだいぶ環境が変わったようでお互いの近況報告を重ねました。周りはみな環境が変わっているのになぜか私だけ変わっていないのは取り残されたようで淋しい気もしましたが…

そんな中で『今度息子が・娘が受験を迎えて…』という話がなぜか重なりました。ウ~ン… 中にはその子がまだ幼いときに一緒に遊んだことを思い出す子もいたのです。あの子がねぇ… しかし、『受験』という話を聞くとこちらとしては仕事モードになってしまいます。

そして共通して聞かれたのは父親の立場についてでした。奥様方は揃って受験に前向き学校や模試業者の主催する説明会にも熱心に足を運んでいらっしゃるようでそれなりの情報を蓄積されているようです。そんな時に『オヤジも一緒に行った方が良いのかな?』と言うことでした。

お子さんからすれば自身の受験を家族全員に応援して欲しいのは紛れもない事実だと思います。説明会に出席し、情報を収集するのも応援の一つだと思います。ただ、全員で同じスタンスの応援をしてしまうことはちょっと危険かも…そんな時があります。

以前お預かりした生徒さん、こちらのご家庭はお母様が非常に熱心で情報収集や勉強の仕方などについても一家言持っていらっしゃるほどでした。お子さんもとても素直な生徒さんでした。いつも周りの言うこと全てに『はいっ!』と答えてしまう姿が印象的でした。

ただ、受験の持っている魔力に呑み込まれた時期がありました。模試の結果が上がらない時期、普段の学習でもつまらないミスを連発してしまう時期、どうしても勉強から逃げたくなる時期…そんな時にどうしても母子の関係が悪化してしまいがちです。こんなケース、本当に塾は無力だな…と感じました。そしてこれを救ってくれたのがお父様でした。

お子さんの頑張っている姿、お母様が全力で応援している姿全て是認し、これまでのことよりこれからのことに目を向けるよう諭してくれたそうです。それが契機となり、見違えるほど明るく伸び伸びと取り組めるようになった、お母様も心にゆとりを持ってサポートしてくれるようになった、全てが好循環に回り始めました。

実際にはその後もいくつかの物語があったのですが、その都度お父様が関心を持って助言をして下さって受験を乗り切り、一番勝ち取りたかった進路に進むことができました。因みにその生徒さん、今では夢だった世界金融を舞台にバリバリと頑張っています。

このケースでは日々のサポートをお母様が、そしてお父様は大局に立って応援して下さいました。実はこのようなケース、大なり小なりはありますが、耳目にすることが多いものです。皆さんのご家庭でもあることなのではないでしょうか。

良くないな…と思うケースは家族全員があまりに一生懸命になるが故に受験の魔力に呑み込まれてしまい、方向性を見失ってしまうことです。ご家族の中に大局を見る役割を果たす方がいることは大切なことです。