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319 先人の言葉

319 先人の言葉

先日、ひょんなことからプロボクシングの伝説的な名トレーナー、エディ タウンゼントに興味を持ち、書物やネットで調べる機会がありました。調べれば調べるほど興味を持たせてくれる人物像が浮かび上がってきました。

エディはハワイ生まれ、アメリカ人の父と日本人の母を持って生まれました。自身もハワイのアマチュアチャンピオンでした。太平洋戦争を機に指導者に転身して日本で名ボクサーを数多育て上げた日本ボクシング界の財産のような人でした。

この頃の日本は高度経済成長期スポーツ界は根性論が主流の考え方でした。ボクシング界も例外ではありません。こんな状況でエディは『そんな考えを持った人と一緒に指導は出来ないよ!』と突っぱねたこともあったそうです。そんな話を聞くと彼の考え方や指導法は50年先の現代でも十分通用する画期的なものだったに違いありません。

エディは若者を指導し、育て上げるに当たり、様々な名言を残しています。有名な言葉では『Standing and Fight!(立って、そして戦いなさい)』『ボクサーは負けたときに本当の友達が分かる』等々。

エディについて書かれたものを読んでいく中で一つ、彼の言葉が私の気持ちを捉えました。『100%教えない。70%・80%教えてあとは考えさせる。頭を使わなかったら良いボクサーになれない。』この言葉は坂本龍馬が言った『10の仕事のうち8・9割をやって残りを任せ、花を持たせる。それが粋な仕事。』に通じるものがあるように思います。

私の仕事に置き換えると『最後まで教え切ってしまうことは生徒の考える機会を奪ってしまう。最後の最後には自力で答えを出させることが考える機会を創造し、生徒自身に自信を付けさせられる。』と言い換えられるのではないでしょうか。とかく目の前の『解った!』に飛びつきがちですが、じっくりと腰を据えて本当に理解して貰えるように導いていくことが大切なことだと思います。

もう一つ、『試合に勝ったらリングで会長と抱き合うと良い。負けたらボクが抱きしめてあげる。』これは『難関校合格実績』など成功した生徒さんだけを褒め称える塾業界にも警鐘としておきたい言葉です。志望校に合格したらご両親や学校の先生、そして友達と喜びを分かち合ってほしい。そして期待しない結果が出たら教室でこれまでの頑張りを確認してこれからの善後策をとってほしい。そんな風に思っています。

2019年度公立入試発表の前日、こんなことを考えました。