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318 大資本の運営だから・・・

318 大資本の運営だから・・・

学習塾に限らず、教育関係業界や習い事業界では学年末・年度末に当たる2月末・3月末には新たな教室が出来たり、既存の教場が閉鎖されることがあります。特に既存のものがなくなってしまうことはある種の感慨を持ってしまいます。

先日も東京時代の先輩から私の元勤務教室近くにあった水泳教室(結構有名なところです)が撤退したと聞きました。立地も良く、生徒数も集まっていたように記憶していますが、もう10年・・・いや15年以上前の話なのであの日の面影はないのかもしれません。

その先輩、今でも学習塾業界にいるのですが、興味深い話を聞くことが出来ました。『学習塾業界で独立するような人間は大体変わり者(私もそうではないかと思います)なので採算は二の次に考えてしまうようだ。』『でも会社組織となれば話は違う。採算は大事な経営において大切なスペックだから。』

『そうなれば教室を展開して採算が取れないと思えばさっさと撤退するのも会社経営の特徴。また、好調な経営をしていた教室でもガタッと来れば撤退してしまうのも会社経営ならでは。』『そう考えるとテレビCMをガンガン打つようなところや毎週のようにきれいな新聞折込を入れるところはねぇ・・・』

そこで先輩は私に意見を求めてきました。『飯塚はそんな大資本の塾に対抗するために何を考えて運営している?』この問、私には本当に難しい問題でした。実のところ、大資本に対して何かを考えて運営して・・・と言うものは全くありませんでした。ただ目の前にいる生徒さんに、この考えだけでこの教室を運営しているからです。

広告も費用を掛けずにすむよう全て手作り、ホームページも友達の協力を得て制作・運営しています。教室内の掲示についても模試業者やご厚意を頂いている私立学校からのポスターを除けばほぼ手作りです。意外に知られていないのですが、教室ロゴも友達が破格の扱いで幾つかの原案を手作りしてくれたもので、その選択は当時の生徒さんが手伝ってくれたものです。

そうやって考えると資本面ではチェーン塾に勝てるところはありません。しかし、その上でもまだこの教室が生き残っているのは情熱だと思うのです。学習塾はある程度のスパンで生徒さんが入れ替わります。したがって良いときも悪いときもあります。しかし悪いときに差し掛かったからと言って教室を畳もうとは考えませんでした。在籍していた生徒さんやこれから入会するであろう未来の生徒さんのためにも良い教室であり続けよう、そう思って運営しています。

ある学習塾運営会社の全社会議で経営陣に向かって『あなたたちは生徒を数字としか見ていない。私はそんな会社では働けない。』と声を上げ、決然と会社を去った方がいました。私はその方の凜とした姿勢に感銘を受けました。私は『教室に詰め込むものは生徒さんの未来だ。それを生徒さん自身の手で掘り起こせる場所になるべきだ。』と思って教室運営をしています。