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255 千葉県の公立高校入試が・・・

255 千葉県の公立高校入試が・・・

千葉県の受験業界では2021年度公立高校入試(2020年4月に中学3年生となる生徒さんの受験)が大変革を起こして・・・と捉えられていますが、実際は違ってきているようです。大なり小なりの違いはありますが、既に各分野で旧来と違った動きが出てきているようです。今回はその点について論議していきたいと思います。本章は少し長くなりますが敢えて分割せずに話を進めていきます。

2021年度公立高校入試の大きな変更点は日程の一本化です。現状の入試制度だと公立前期の出願から後期合格発表までの入試行事全てが終わるのに1ヶ月以上の日数を有します。私立高校入試を含めると1ヶ月半の日数を必要とするようになります。こうなってしまうと中学生の授業時間確保が難しくなり、受験生を選抜する高校側も学校の機能を一時停止して選抜を行う以上、大きな負担がかかります。それらを少しでも改善するために入試を一本化する判断になっているのです。

その点以外で既に行われている改革があります。入試そのものの変革が行われているのです。入試改革について入試日程の一本化のみがクローズアップされていますが、入試改革は多面的に画策されています。2018年度入試より公立高校の入試判定基準が明確(でもないと思われる学校も多いようですが・・・)に示され、各学校の求める生徒像が明らかになっています。A高校では当日筆記試験の能力を高い生徒が求められ、他方のB高校では内申重視で学校行事に積極的に参加した生徒が求められるなど、各校の特色が露わになっています。

また、2017年度入試と2018年度入試を比較すると各学区トップ校(もしくはそれに準じた高校)の偏差値・倍率は上昇傾向にあります。それに対して中堅校以下の高校は偏差値・倍率とも下降傾向にあることも読み取れます。今後の予測としてトップ校の次に控える上位校(偏差値60前後の公立高校)の偏差値・倍率アップが予想されます。特に都市部の学校では顕著に出ることが考えられます。

前期後期入試についても残すところ2019年度・2020年度の二回となりました。しかし2018年度入試の学力検査(筆記試験)では旧来の動きとは全く異なった動きが見られました。従来、前期後期の平均点は前年を基準に前期が上がれば後期も上がるような動きをしていました。そして多少の増減はあっても前期の平均点プラス30点が後期の平均点となっていたのに対し、前期後期の点数が逆転する現象も起こっています。

平成30年度
前期選抜の平均点  294.3点
後期選抜の平均点  290.9点 (前期との差 -3.4
平成29年度
前期選抜の平均点  276.1点
後期選抜の平均点  306.9点 (前期との差 +30.8)
平成28年度
前期選抜の平均点  257.5点
後期選抜の平均点  288.7点 (前期との差 +31.2)
平成27年度
前期選抜の平均点  266.5点
後期選抜の平均点  294.2点 (前期との差 +27.7)
平成26年度
前期選抜の平均点  257.9点
後期選抜の平均点  280.7点 (前期との差 +22.8)
平成25年度
前期選抜の平均点  232.3点
後期選抜の平均点  271.2点 (前期との差 +38.9)

これらの現象は私立高校にも影響を及ぼし、高校受験の全体像さえ変えつつあるように感じます。従前千葉県は『公立第一志望校(前期・後期)と滑り止めの私立』という受験形態が主流でしたが、『公立の第一志望・私立の第一志望・私立の併願』と変わっていくことが予想されます。事実、上位私立校の倍率は近年上昇傾向にあるからです。

ここには私立高校進学における助成金も大きな影響を及ぼしているように思います。こういった背景から千葉県はこれまでの『公立天国』からようやく脱却できるチャンスに直面しているのかもしれません。こういった書き方をしてしまうと『私立学校に肩入れしているのか?』とのご指摘を頂くかもしれませんが、敢えて誤解を恐れずに・・・ 公立高校が優れていると考えるのは幻影に過ぎないと感じる受験生やそのご家族がちらほらと出ているのです。これはまた別の機会に・・・

私立高校・私立中学校についても入試変革・学校改革を行っている学校が目立ちます。私立高校は入試倍率出題傾向・内申点を含めた判定基準など大きく変化している学校が非常に目立ちます。また中高一貫校として運営されている私立中学校でも同じような傾向を示しており、中学から高校への内部進学枠を大きくした・中学の募集定員を増やしたなどの学校もあります。

私立高校についての注意点は2点あります。一点目は上位校の競争激化、そして二点目は併願基準の変更です。つまり『今まではこれでOKだったのだから、この位で良いだろう』が通用しなくなるのです。上位校の競争激化に対しては模擬試験の活用が重要になります。また、併願校の基準値については最新情報を得ることと、その運用方法を間違えないことです。つまり同じ『5科20』でも中学3年生前期のみなのか、前期プラス後期中間試験なのか、その両方か、両者のうちの良い方か、他の加点要素の有無などをきちんと整理できていないと最悪の場合、受験に対応出来なくなるのです。

これらは今年度に入って私が肌で感じたことです。今年(2018年度、2019年度入試)はものすごい勢いで高校受験が変わるものと思っています。だからこそお子さんの進路については『二年前にお姉ちゃんが・・・』『去年お向かいのお子さんが・・・』となさることだけはお勧めしません。新鮮な、湯気の出ているような情報を元に進路を考えて欲しいと思っています。

毎年、ゴールデンウィーク前後に前年度の入試総括が出揃います。今年(2018年5月現在)の入試も非常に難しいものだったと思います。その上で、当校に在籍した生徒さんは情報戦を制することが出来たのではないかと一人悦に入ってます。

本章は長文となってしまい、申し訳なく恐縮しております。最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。