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201 キミは負け犬なんかじゃない!

201 キミは負け犬なんかじゃない!

以前私の運営する教室を卒業した生徒さんから久しぶりに電話がありました。本当に久しぶり、卒業してから10年経ったとのことでした。どうしたのかと思って話を聞くと、結婚したとのことでした。望外の嬉しい報告を聞けたこと、幸せを分けて貰ったようでありがたいなと思っています。

もう10年も経って時効だと思いますので…今回はこの生徒さんの話をしたいと思います。この生徒さんは勉強が大嫌いでした。お兄さん・お姉さんを持つ末っ子で、いつも『お兄ちゃんは~~なのに』『お姉ちゃんは△□なのに』と怒られ続け、塾に入った当初はコンプレックスの塊のようでした。

しかし塾に通う様子、学習の姿を見ていると決して何か原因があって勉強がつまずいているわけではないことが判りました。そう分かれば後は『つまずいているところ・解らなくなっているところまで勉強を戻して』行けば良いだけです。そして学習習慣、初めは欲張らずに毎週塾で取り組んだ勉強の復習だけに絞って取り組んでいきました。

そうやって学習が進んで学校でも少しは余裕を持てるようになったかな…と思った時期、彼はぱったりと学校に行かなくなりました。原因はイジメでした。授業中に指され、思ったこと(これが運悪く的外れな応答でした)を言った途端、クラス中からはやし立てられ、それが休み時間も放課後も続いて…しかも何日も続いて…とのことでした。

塾も休みがちになってしまったのですが、他の生徒さんが来ないような時間帯にひょっこりと顔を出して30分~1時間程勉強して…と言うことが続きました。それでも不規則動詞漢字・単語などを覚えることを極端に嫌い、それを求めると『ボクなんかに出来るわけがない』と投げ出したこともありました。

当時は私自身も次第に熱くなってしまい、『やれば出来る。覚えられないのはやっていないだけの話だ!』と正面から切り込んでいきました。小テストも他の生徒さんなら1回で合格するところを5回も10回も、場合によっては30回も50回も…と言う時すらありました。

ご家庭の様子をお母様に伺うと家でも苦戦している様子が漏れ聞こえてきました。それでも諦めず、投げ出さず、支え続けて下さったご両親やお兄さんお姉さんの奮闘に頭が下がりました。

クラスでいじめられている原因学習の遅れである以上、学習は休ませるわけには行きませんでした。その上で彼には『やれば出来る』ことの意義を理解して貰えるような進め方を心掛けました。結局正規の時間帯での授業ではなく、イレギュラーの授業時間帯となってしまいましたが、学校に戻れるまでは致し方なかったものだと思っています。

結局彼は中学2年生の半分近くを欠席しましたが、中学校に戻ることが出来ました。勉強も完全に追いついた状態には至りませんでしたが、学校授業が理解できるまでにはなれました。彼は中学校卒業と同時に塾を卒業しましたが、その時にこんなことを言って巣立っていきました。
「『どうせ』とか『頭が悪いから仕方ない』って言う言葉は努力してこなかった自分に対しての言い訳だって気付きました。やるだけやってできなかったら諦めも付くけど、やる前に諦めたら絶対に後悔する。」

高校に進学しても勉強嫌いは大きく改善しなかったそうですが(笑)、自分のやりたいことを見つけられたのでそちらに対して執着することを覚えたそうです。そしてその延長上にあった大学に進学し、卒業後も希望職種で活躍しているそうです。

彼の姿を見ていると『前向きになる』『自分の将来に真剣になる』など大切な言葉がどんどん連想されてきます。そんな姿を間近に見ることが出来たことは本当に幸せでした。今後も彼らしさを忘れずに理想に向かって歩き続けて欲しいと思います。