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101 指導するタイミング

101 指導するタイミング

最近のテレビではとってもおいしそうな野菜を育てている農家さんの紹介を目にすることが本当に増えました。研究に研究を重ねて手間暇をいとわず作ることにより、その野菜・果物本来のおいしさを味わうことができる、我々消費者にとって本当にありがたいことです。

そんな番組を見ているうちに自分自身の間違いに気付きました。それは『野菜や果物は水や肥料をあげればあげるだけ味が濃く、大きく育つ』という誤認です。

先日もフルーツトマトを作っている農家さんのインタビューが放映されていました。ぱっと見たところ、葉や茎は茶色に変色して今にも枯れそうでした。しかし生産者はこの状態を待っていたそうです。こうすることにより、力強い根が育ち、果実の味が濃縮されると説明していました。

学習指導においても似たような事が要求される場合があります。一問一問全て手取り足取り教える段階から一歩進んで、自分で考えてみる・自分で調べてみる、それによって解ける段階を目指します。最初から最後まで全てを丸抱えで指導してしまうことはその後が伸びなくなってしまうのです。

最初は全てを指導する形になりますが、徐々に段階を踏めるようにしていかねばなりません。そして時期を誤らずに指導方法も切り替えていかなくてはなりません。何も『最初から最後まで水も肥料もあげてはいけない』としてはならないのです。

もっと解りやすい方法で例えると、水流に例えることができます。その水路には所々に水の流れを妨げる堰があるのです。薄い堰、分厚い堰それぞれに特徴があります。それぞれの堰に極細の水路を作ることが我々学習塾スタッフの役目なのではないでしょうか。ありの巣穴ほどの水路でも水が流れることにより大きな水路となり、やがて本流となるのです。

私も以前は全ての堰、阻害物を取り除いて流れやすくすることが指導だと思っていましたが、それでは生徒さんに達成感を感じさせることができないと気付きました。しかし、あたかも自力で解けたように思わせること、言い換えれば指導という水や肥料は最小限に抑えることは次に進める意欲になるのだと思い直しました。

もちろん、こういった形で見守る生徒さんは何段階も乗り越えた上で成り立っています。したがって手取り足取りの段階を抜けられていない生徒さんにはそれに応じた指導も求められます。その中でも徐々にハードルを乗り越えて行けるようになって欲しいと思います。

いずれの生徒さんもいつかは社会という大海に出ます。その時も小中学生の時に迸流(へいりゅう)でいたこと、清流でいたことを忘れないで欲しいと思います。