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99 『わかる』と『できる』

99 『わかる』と『できる』

学習塾の新聞折込やテレビCM、毎回同じ事を言っていますよね? 少ししつこいな、とか、他にないの? などと感じる方も多いのではないでしょうか。当事者である私も・・・そう思います。

『毎回同じ事を・・・』の中に、「『わかる』と『できる』の違い」について言及する塾があります。それに違和感を感じる方もいらっしゃるかと思います。今回は「『わかる』と『できる』の違い」について述べていきましょう。

ゆとり教育の象徴として『円周率をおよそ3とする』という乱暴な指導要領がありました。各界からは非難囂々(ひなんごうごう)でしたが、現在の小学校では『円周率は3.14』として指導しています。

入塾の動機が『図形、特に円が解らなくなったので、それを教えて欲しい』と入会することがあります。では塾で『円の円周・面積を求める』だけを指導すればその生徒さんがテストで点を取れるようになるか、と聞かれれば恐らくノーと答えざるを得ません。

円の公式で覚えておかなければならないものは以下の二つです。
(円の面積)=(半径)×(半径)× 3.14
(円周の長さ)=(直径)× 3.14

円が解らない、にはいくつかの原因が考えられます。
① 円の公式そのものを暗記できない
② 小数の計算ができない
③ 3けたのかけ算ができない
④ かけ算の筆算ができない
⑤ 九九ができない

ざっと上げてもこれだけの原因が考えられます。そのうち、①以外の原因、つまり『円の公式は暗記できているけど、計算そのものができない(または間違えてしまう)』のが『解っているのにできない』状態です。

よく耳にするのは「『わかる』を『できる』にするには演習量」とする指導方針をお持ちの学習塾がありますが、それでは片手落ちなのではないかと思います。きちんと原因(解らなくなっている・正答を導き出せない根っこ)を解決した上で演習を積み上げることは遠回りに見えますが、実は一番の近道なのです。

ただし・・・近道と論じましたが、これも原因の原因を解決しなければならないので1週間で何とか、とはならないこともあることはご理解ください。

その上で対策を講じるべきは・・・早めに原因となるべき箇所(特に基礎事項)を解消するに限るのではないでしょうか。特に解らない単元が2箇所3箇所と増えていけばそれだけ取り扱わなければならない項目も増えていきます。やるべき事が増えれば負担は生徒さんに掛かってしまいます。

『風邪は引き始めが大事』、これは勉強にも言えることなのではないでしょうか。症状が軽いうちに早めの対処を心掛けたいものです。